「人が足りない。でも、求人を出すほどの余裕もない」

小さな工務店さんから、いちばんよく聞くお悩みです。人を1人採用しようとすると、求人の費用、面接の時間、仕事を覚えてもらうまでの手間がかかります。採用できたとしても、辞めてしまえばまた一からです。

そこで、採用を考える前に一度だけやってみてほしいことがあります。事務作業に、毎月何時間かかっているかを数えることです。数えてみると、「人が足りない」の正体が、実は人数ではなく手作業の多さだった、ということがよくあります。

この記事では、社長さん+事務さん1人の工務店を想定したモデルケースで、「月80時間の事務が、整理と自動化で月15時間になったら」を試算してみます。

採用の前に「時間」を数える理由

人手不足には、2つの種類があります。

  • 仕事の量そのものが多い:現場の数や受注が増えていて、どう工夫しても人の手が要る
  • 手作業が多くて、時間が溶けている:同じ数字の打ち直し、書類や写真の探し物、月末の手集計に時間を取られている

前者なら採用が正解です。でも後者なら、人を増やしても同じ手作業を2人でやるだけで、根っこは変わりません。どちらなのかは、時間を数えるとはっきりします。

ここで大事なのは、「AIを入れるかどうか」「どのツールを使うか」から考えないことです。まず時間。ツールは、減らせる時間が見えてから選べば十分です。

モデルケース:工務店の事務、月80時間の内訳

案件が月に10件前後、社長さんと事務さん1人で事務を回している工務店を想定して、よくある作業ごとに時間を置いてみました。

  • 見積の作成と、注文書・台帳への転記:月20時間
  • 請求書の作成と、入金の確認:月15時間
  • 現場写真の整理と、あとからの探し物:月15時間
  • 図面・書類・領収書の探し物:月10時間
  • 台帳の更新と、月末の集計:月12時間
  • 電話やLINEの内容を、メモや台帳に書き写す:月8時間

合計で月80時間。1日8時間で割ると、まるまる10日分です。人ひとりのフルタイム勤務の半分近くが、「打つ・探す・写す」に使われている計算になります。

※ これは説明のためのモデルケース(試算)で、実在の会社の数字ではありません。実際の時間は、案件の数や今のやり方によって大きく変わります。

整理と自動化で、どこまで減らせるか

同じモデルケースで、それぞれの作業をどう減らすかと、そのあとの時間を試算してみます。

  • 見積と転記:案件台帳1か所に入力し、見積書・注文書はそこから引っぱる → 月20時間 → 5時間
  • 請求と入金確認:台帳から請求書を作り、未入金の案件は自動で一覧にする → 月15時間 → 3時間
  • 現場写真:案件ごとのフォルダと名前のルールを決め、振り分けを自動にする → 月15時間 → 2時間
  • 書類の探し物:フォルダの置き場と名前のつけ方をそろえる → 月10時間 → 2時間
  • 台帳と月末集計:集計と月次レポートを自動で出す → 月12時間 → 1時間
  • 連絡の書き写し:よく受ける連絡を入力フォームにまとめる → 月8時間 → 2時間

合計すると、月80時間 → 月15時間。毎月65時間が浮く計算です。

どれも、いきなり大きなシステムを入れる話ではありません。見積と台帳のやり方はExcel台帳の二重入力を減らす整え方、写真の置き場は現場写真の案件別フォルダの作り方で、いまのExcelやスマホのままできるところから紹介しています。

65時間を、お金と人に置きかえると

浮いた時間を金額にしてみます。給与だけでなく社会保険なども含めた人件費を、仮に1時間1,500円とすると、

  • 毎月:65時間 × 1,500円 = 約9.8万円
  • 1年:約9.8万円 × 12か月 = 約117万円

仮に整理と自動化に20万円かけたとしても、この試算なら2〜3か月ほどで元が取れる計算になります。もちろん、時給の置き方や減らせる時間が変われば、この数字も変わります。

そして、お金以上に大きいのが時間の使い道です。月65時間あれば、

  • 採用しないまま、受ける案件を増やせる
  • 社長さんが事務から離れて、現場や営業に出られる
  • 事務さんの残業を減らして、辞めにくい職場にできる

「人を1人増やす」の代わりに、「手作業を減らして、今の人数で回る量を増やす」。そういう選び方ができるようになります。

御社の時間を数える、いちばん簡単な方法

むずかしい分析はいりません。やることは3つだけです。

  1. 1週間だけ、事務作業をメモする:紙でもスマホでもいいので、「何の作業を、何分やったか」を15分単位で書いておく
  2. 作業ごとに合計して、月の時間にする:1週間の合計に4をかけると、だいたい1か月分になります
  3. 「打ち直し」「探す」「書き写す」に印をつける:この3つが、いちばん減らしやすい時間です

数えた時間を入れると、減らせる時間と金額がその場で出る試算ツールも用意しています。今の時間と、減らせたらいいなという時間を入れるだけです。

全部を一度に減らさなくて、大丈夫です

6つの作業を並べましたが、全部を一度に変える必要はありません。時間がいちばんかかっている作業を1つ選んで、そこから減らすだけでも、毎月の手ごたえは変わります。

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