バンコクは、予定を詰めると逆にぼんやりしてくる街だと思う。ちゃんと観光して、ご飯も食べて、帰ってきたのに何も残ってない、みたいな感覚。それに気づいてから、朝だけ散歩する旅のリズムに落ち着いた。

なぜ朝なのか

バンコクは日中、正直しんどい。35度を超える気温と湿度の中をウロウロするのは体力を消耗するし、観光地はどこも人が多い。午後になると雨が降ることも多くて、予定通りに動けなかったりする。

ところが朝6時〜8時台は別の街みたいだ。気温は30度を切るか切らないかくらいで、風がある。

人通りも少なくて、托鉢の僧侶が通ったり、屋台のおじさんが準備してたり、近所の人がゆっくり歩いてたりする。観光用じゃない空気がある。

その時間に1〜2時間だけ歩く。地図を見ないわけじゃないけど、目的地は決めない。気になった路地に入って、引き返して、また別の道を行く。それだけ。

具体的にどう過ごしてるか

起きるのは5時半か6時くらい。ホテルのロビーを出て、まず近くのコンビニかカフェで何か買う。チャーン・コーヒーでも、セブンの温かいミロでも何でもいい。飲みながら歩く、それがスタート。

チャオプラヤー川沿いを歩くのは景色がいいし、人が少ない時間帯は静かで気持ちがいい。

ワット・アルンの裏手あたりを通ると地元の市場があって、野菜とか魚とか並んでたりする。観光地として来てるわけじゃないのに、なんか記憶に残る。

ヤワラート(中華街)周辺も朝は面白い。夜の喧騒が嘘みたいに静かで、前日の祭りの後片付けをしてる人や、朝粥を出してる屋台が出てくる。

あの時間帯に食べる粥は、夜に有名店で食べるものよりずっとうまかった、という記憶がある。

午後はゆるく、夜はもっとゆるく

朝歩いたあとはホテルに戻って、シャワーを浴びて、少し寝る。このリズムが結構いい。日中の暑い時間帯に外を歩き回らなくていいし、昼寝があるから夜も眠くなりにくい。

午後は冷房の効いたカフェでぼんやりしたり、気が向いたらショッピングモールをウロウロしたりする。MBKでもエムクオーティエでも、暑さをしのぎながら適当に見て回るだけでも時間は使える。

観光スポットを「制覇」する感じじゃなくて、ただそこにいる感じ。

夜はトゥクトゥクに乗って屋台街に行くか、ホテル近くで食べて終わり。深夜まで飲んだりするより、翌朝の散歩を楽しみに早めに切り上げる方が、旅全体の質感がよくなる気がしてる。

この旅のリズムで残るもの

帰ってきてしばらく経つと、「観光した」記憶より「歩いてた」記憶の方が残ってる。ワット・ポーやグランドパレスのこともうっすら覚えてるけど、朝の路地で食べたカオトムの味とか、川沿いで猫が寝てたこととか、そういうどうでもいいことの方がふとした瞬間に出てくる。

予定を詰めると「全部行けた」という達成感はあるんだけど、街の温度みたいなものを覚えてないまま帰ってくることがある。朝だけ散歩する旅は、正直「観光した」感は薄い。

でも、バンコクの朝がどんな感じだったかは、わりとはっきり覚えてる。そのくらいでいいかなと、最近は思ってる。